『犬を連れた奥さん』を読む
こんにちは、黒田です。
第一回目の投稿になります。
記念すべき一回目の作品は
『犬を連れた奥さん』です!
この作品はロシアの作家アントン・チェーホフが書いた短編小説です。
チェーホフについては別の記事でもまとめようと思います。
では早速、読んでいきたいと思います。
- 登場人物
『犬を連れた奥さん』の登場人物は少なく、二人しかいません。
グーロフ:4妻子持ちの男、女性を下に見るが、女好きな一面をもつ
アンナ:若い夫人だが、夫との結婚生活に飽き飽きしている。
他にも多少の人物が登場しますが、名前も出ないのでこの二人だけで充分でしょう。
あと人ではないですがアンナのペットのスピッツ犬も登場します。
- あらすじ
では、あらすじを見ていきましょう。
ヤルタにすむグーロフは、新しく町にやってきたという夫人の噂を聞きつけます。夫人はいつもペットのスピッツ犬を連れていたので、〈犬を連れた奥さん〉と呼ばれていました。グーロフは、年上の妻との結婚生活に嫌気がさしてて、この噂を聞きつけると、「もしその人が一人で来ているのなら、ナンパでもして知り合おう」と企みます。*1
ある日、グーロフは公園で食事をしています。そこに〈犬を連れた奥さん〉のアンナがやってきて、彼のすぐそばの席に座ります。そこで彼は、ここぞとばかりに、彼女のスピッツ犬と遊び、彼女に近づきます。こうして、二人の関係は一気に縮まります。
二人はそのまま逢瀬を重ねていきます。しかし、ある時アンナのもとに手紙が届きます。それはアンナの夫からでした。アンナの夫は目が悪くなり、そのためにアンナに帰ってきてほしいというのでした。そうして二人は別れることになります。
季節は夏から冬へと移ります。グーロフは故郷のモスクワへ戻りました。彼はどうしてもアンナと過ごしたことが忘れられません。どうしても会いたくなったグーロフは、アンナのいるとある町へ出かけていきます。そして、アンナが行きそうなとある劇に眼をつけ、彼も劇場へ行くことにします。
アンナはやはり来ました。彼女の姿を見たグーロフは、胸が締め付けられる想いに駆られます。そして、アンナの居る席に行き、遂に声をかけます。彼女は驚きながらも、自分もグーロフのことを想っていたと言います。こうして二人は、再び関係を結びます。
アンナは、グーロフのいるモスクワへ顔を出すようになりました。彼はといえば、子育て中にも彼女との逢瀬想い馳せています。
グーロフはアンナのもとに行きます。二人はキスをし、何気ない会話をします。しかし、アンナは話すうちに、この関係に耐えきれず泣き出してしまいます。お互いが恵まれない結婚生活を送っており、ようやく本当に愛する人を見つけた二人。
二人は長いあいだ相談します。どうすれば幸せになれるのか。この関係は続くのか。未来の幸せな生活を願って…
細かい部分を省きましたが、大体の話の流れになります。
よくある不倫小説に思われますね。
不倫をテーマにした文学作品は数多あると思います。
またどこかで取り上げられれば良いと思っていますが、代表的なものだと、トルストイ『アンナ・カレーニナ』、フローベール『ボヴァリー夫人』などでしょうか。
世間でも、芸能人の不倫ニュースが出るとバッシングにあったりと、不倫は基本的には非難されるものだと私たちには認識されます。
では、『犬を連れた奥さん』ではどのように描かれているでしょうか?
チェーホフは何かメッセージがあってこの小説を書いたのでしょうか?
この小説の終わりに注目してみましょう。
先程、紹介したあらすじでもわかると思います。
関係を結んだグーロフとアンナは、これから先の人生や二人の関係について相談する、そのような場面で終わっていたと思います。
二人の今後がどうなったのか、二人で過ごしたのか、それとも関係を絶ったのか。
幸せな不倫生活なのか、不幸な不倫生活、
あるいは、幸せな結婚か不幸な結果か
この答えをチェーホフは描いていません。
文学作品というものは、長い年月をかけ、多くの人に読まれてきたものです。
そのため、人類の普遍的な答えを教えてくれる、そういうものと捉える人も少なくはないでしょう。
しかし本当にそうでしょうか。
文学といえど、そのような答えを教えてくれる聖典ではないはずです。
『犬を連れた奥さん』では答えを教えてくれません。それ故にチェーホフの作品には、どこかすっきりとしない終わり方のようにも感じられます。
でもチェーホフが描きたかったのはまさにそのようなものなのかもしれません。
人間は善も悪も持っていて答えは自分で見つける。
この二人の結末も、読者自身が想像する必要があります。
なんだか、人生論みたいなことにもなってしまいましたが、今回はここで終わります。
今回は『犬を連れた奥さん』についてのあらすじと結末部分について書きました。
初めてでまとまらない部分もあったと思いますが、できるだけ多くの文学作品について書けるように尽力しますので、よろしくお願いします。